アミ小さな宇宙人への批判
この本は絶版になっているので、入手が困難なうえに、中古本はひどく高価になっているそうだ。
だから、実際にこの本を読んだわけではなく、インターネットで入手した情報を元にしていることをお断りしておく。
まず、いきなり変だなと思うことは、スーパーコンピュータで、絶対にお互いに当たることがない、高度にコントロールされているはずのアミのUFOがいとも簡単に墜落して海に落ちてしまうことが奇妙すぎる。
わざと落ちたのなら、納得いくが。
そして、地球人の男の子の名前だ。ペドリュートという名前が、キリストの第一の弟子、ペトロと似ていることは、ぼくのうがった見方だろうか。
福音書にみられるイエスの教えと同じものが次々と出てくる。
ペドリュートが祖母のことを思い浮かべて先のことを心配していると、「どうして先のことを心配するのか」と、アミが言い出し、それを非難する。
「何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。(中略)だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけでじゅうぶんである」
―――マタイによる福音書、第6章31より。
また、羊の肉を食べることに嫌悪感を抱くアミについてだが、イエスが所属していたとされる、エッセネ派では肉食を禁じていたという(死海文書)
そもそも、かわいい動物だから食べるのはかわいそうとは、変でしょう。じゃあ、憎たらしい動物なら殺してもいいんでしょうかね。
畜産動物を食べる、ということは、その牧畜の盛んな地域では、農作物があまり採れず、いわば、当然の結果として家畜を殺して食べているのであって、牧畜している人たちにとっては、羊や牛は、自分たちの生命を維持するために必要不可欠なものなのである。
「かわいい動物を殺して食べてしまうなんて、かわいそうだからダメ」などという論調は現実を知らない現代の裕福な人たちの妄想といってもいいだろう。
アミは、「われわれは、神を信じているから戦争をしない」と主張しているが、そのアミの言う「神」についての説明がない。ここでは定義されていない。
「神は人間の形をしていない」とは、現在のキリスト教の否定となる。なぜなら、神とキリストは一体であり、キリストという人間を拝んでもいいことになっているのだから。
なお、原初のキリスト教では、
偶像崇拝は禁止されていた。
そして、もっともおそろしいのは、アミが、宇宙の唯一神を自分たちの神として、誰が決めたのか知らない「宇宙の基本法」を主張し、それによって、世界統一をはかる、ということ。
ということは、他の宗教をすべて否定し、その宇宙の唯一神と宇宙の基本法による統治だけを認め、他は認めない、ということだろう。
実際、アミは、選ばれた人たちだけを救済し、他の人々は戦争で破滅すると説明している。
ひどい。
それじゃあ、われわれ日本人は皆殺しにされるわけだ。もちろん、その「宇宙の唯一神と宇宙の基本法」に改宗した人だけは助かるのだろうが。
そして、地球人は洗脳されている、などとアミは言っているが、洗脳しようとしているのは、アミのほうである。
愛を数値で測定するだとか、愛の数値が70%未満の人間は救済しない(集めて戦争させる)だとか、アミの言うことは、血も涙もないのである。
UFO研究家の夫婦がUFOに乗るアミたちを拝む場面では、偶像崇拝を否定しているが、ここで、もうすでにアミたち宇宙人がいわば預言者の立場になってしまっている。まるでキリストかマホメットの扱いだ。
そして、愛の測定値が一万以上の人たちが住む、「太陽の人たち」というところが、いわゆる彼らの天国、パラダイスなのだろう。
地震、パンデミックの予言、地球破滅を防ぐ設備など、なんとも、他の星の住民なのに、地球の悪口を言うわりにはおせっかいなのである。
地球救済計画にしても、逃げ出した人たちを「良い種ではない」と否定したり、とにかくひどい。
国境と宗教を否定し、宇宙の基本法による世界政府樹立をすること。そうすれば永遠に生きられるなどということ。
いずれも、どこかの新興宗教と似たり寄ったりの危険思想である。
絵本のようなかわいい挿絵とはうらはらに、ぼくには独裁者による世界征服計画に思えてならない。
まさか、こんな話を本気にする人がいようとは思わないが、もっと奇天烈な宗教を信じている人が多数いることだし、さくらももこの描いたかわいいムードにだまされないよう、じゅうぶん、気をつけなけらばならない。
危険思想にはゆめゆめ、洗脳されないようにしましょう。