唯一神は万能か

唯一神が創造主であるならば、創り出した者であるゆえに、どんなことも、その創り出した物に、造形を加えることができるだろう。

つまり、この世界を創り出したゆえに、この世界を自由に操れるであろう、というわけである。

だから、万能で、不可能なく、何でもできる創造主に無理難題を押し付けようとするのだ。
万能の神にお願いすれば、どんな無理難題でも解決してもらえる、というわけである。

ところが、どだい、そんなことは無理であり、また無理な願いがかなえられたことはいまだかってない。神話や作り話以外には、ありえない。

実際に、「この山をあそこへ移せ」と願っても、実現されることはなかったし、これからもないであろう。

もし、唯一神が正しい存在で、万能であるならば、この、今の人類の社会が、これほど乱れているのを放置している説明がつかないし、過去にも、創造主が直接悪を退治した例が見当たらない。
有史以来、悪は放置され続けているし、正義が実行された政治がどこにも見当たらない。

知らん顔している。

もし、唯一神が創造主で万能であるならば、その存在は、人間社会にほとんど、もしくはまったく関与していないと、考えざるを得ない。

それゆえに、創造主に人間のような性格や感情、愛情などを求めることがまちがいなのである。

―――唯一神は、ただ法則にのっとって、この世界を運営している。無感情な存在である。

そうとしか考えられない。
人間が良かろうが悪かろうが、基本的に関与することはないらしいのである。

いくら義人が懸命に祈っても、太陽が西から上って、東へ沈むことなど、ないのである。

冥界へ行ってきた人物たちによると、神々(唯一神ではない)は顕界(この世)の事柄には一切関与せず、ただ自治に任せているという。
ただ、神々の神聖を汚す者にのみ、罰を与える権限を持っていて、それ以外は口出しできないと。

そうかもしれない。悪人がのさばっている理由に説明はつくだろう。

そして、その法則を「真理」と呼ぶのだろう。