スウェデンボルグの天界

スウェデンボルグのいう天界はすなわち天国、極楽のこと。そう理解してよいのだろうか。
思うに、そうともいえるし、そうともいえないように思えるのだ。

そもそも、何が霊界で、どの範囲がどの霊界なのか、どれが地獄でどれが天国なのか。天国は極楽とおなじなのか。
まとめて、冥界、と呼ぶことにする。

彼の主張では、天界へ入るには、イエスキリストを主と認め、イエスキリストが唯一の神と同一と認めることが、絶対的な条件であり、それ以外の人は天界へは絶対に入れない、としている。

と、いうことは、イスラム教徒や仏教徒、イエスキリストを知らなかった人は、ひとりも天界にいない、ということになる。そして、神とイエスと精霊を三位一体と認めなければならない、としている。

それでは、天界はキリスト教徒によって独占されていることになるだろう。

ここのところが、「霊界からの手記」では、あいまいにされているが、「天界と地獄」では、はっきりと書かれている。
そして、天界には太陽があり、その太陽が主そのもの、その太陽が唯一神だという。主、つまり唯一神と同体のキリストは霊界では太陽としてあらわれ、存在している、と。
その太陽から放射される光と熱は、神の愛そのもの、善そのものである、としている。

それは、他の冥界旅行者もほとんど同じだが、ただ、「キリストが太陽であり、唯一神そのもの」という部分がどうにも引っかかる。

しかも、キリスト教徒以外の(つまり異教徒)人たちも清い心を持って信仰心を持っているものは、天界へ入れる、と矛盾した主張もしている。そして、天界にいちばん多いのはアフリカ人であると。

スウェデンボルグによる霊界のようすをまとめると、

・性格の似た者どうしが集まって大きな集落を形づくっている。国といってもいいかもしれない。
・時間と場所という観念はない。
・神への愛と隣人愛がもっとも大事。
・愛はすなわち、役立ち。天界にも政治組織があり、おのおのが役職をもってその職務を果たしている。
・天界には天使が大勢いるが、全員、もともと地上の人間だった。死んでから天使になった。
・天界には3つの階層があり、上に行くほど純粋である。たがいの往来はほとんどない。
などなど。

これらのスウェデンボルグの言い分を聞くと、先にも述べたが、ほぼすべての他の冥界旅行者と一致している。

一致している部分は、

・性格の似た者が集まって団体を作り、政府のような統治組織をもって運営されている。
・時間と空間がない。
・愛(男女の愛とはちがう)がいちばん大事。
・愛は役立ちである。
・太陽(月とともにあらわれる説もある)がエネルギー源で、生命の源である。
・天使(日本でいうところの神々)は、もともと全員、地上の人間だった。
・霊界には階層があって、たがいの交流はないが、霊魂はその状態の変化によって、移転することがある。
・人が死んですぐに、案内役の霊がやってきて、その人の行くべき霊界の場所へつれていってくれる。

矛盾している点は、

・生まれ変わりはない。人類は地球の自然界で生まれ、そこで人間の霊魂が誕生して、死んでのち、霊界へ入り、そこで永遠の生活をすることになる。
・キリストが唯一の救い主である。
・唯一神を信じないものは天界へ入れない。

よくわからないことは、

・定期的に最後の審判がある。

などである。

スウェデンボルグの「天界と地獄」については、インターネット上を調べてみると、YouTube などにくわしく解説があるようだ。ただし、よく見ていないが。
それで、くわしい解説はそちらをみていただいて、ここではこのあたりにしておく。

さいごに、新約聖書の「ヤコブの書」の一部を抜粋してみる。
(第1章17)

「あらゆる良い贈り物、あらゆる完全な賜物は、上から、光の父から下って来る。父には、変化とか、回転の影とかいうものはない。
父は、わたしたちを、いわば被造物の初穂とするために、真理の言葉によって御旨のままに、生み出して下さったのである」