予言を捏造する

歴史の授業で習ったのだが、中世の日本では、末法思想が流行し、西暦千年ごろに、仏教の教えがすたれ、世の中が乱れる、みたいなものだったと記憶している。そうして、当時の新興宗教が多く発生したと。
それらの新興宗教は、いまでは立派な、古くからある由緒正しい宗派になっている。
この手法、というか流行は古来多くの国や地域で起こっており、キリスト教も同じであることはご承知の通り。例の「ハルマゲドン」である。

ことし2025年には、話題の大災害の予言がある。南海トラフ地震のこともあり、用心に越したことはない。はずれるかもしれないが、当たるかもしれないから。

しかし、世に出回っていた予言のたぐいは全部はずれた。

たとえば、キリスト教で2000年も前に言われた、世界の終わりは「もうすぐだ」といいながら、まだやってこないし、ノストラダムスの大予言も見事にはずれた。
エドガー・ケーシー氏の予言にしても、90何パーセント当たっている、などという人がいるが、彼は1998年に日本沈没すると予言していたのだ。見事にはずれているし、氏は日本が嫌いだったらしい。時代的にそうだろうと思う。

また、シュタイナー教育で知られるルドルフ・シュタイナー氏が、「悪魔が転生してきて、日本にひとつの目を置いて世界を監視し、2025年に世界に災害をもたらす」などという予言をしたという。これはぼく自身がYouTubeで見た。
しかし、すこし調べてみたが、氏がそんな予言をしたという証拠がどこにもない。ただ、「日本という国土は地球を三角の四面体としてみると、ひとつの頂点にあり、変動が起こるかもしれない」と言っていたらしい、ということだけだった。

しかも、どうやら元ネタとなった小説があり、1900年に刊行された、ロシアの有名作家ウラジミール・ソロヴィヨフ氏の「反キリストに関する短編物語」の内容をそのまま使っているらしいのである。

その当時、ロシアと日本はとても仲が悪く、1904年には日露戦争が起こっていて、日清戦争に勝利した日本に対して、ロシアなどでは、黄禍論(こうかろん)といって、日本人を脅威とする論調があった時代だったのである。
だから、日本を中心としたアジア軍とヨーロッパの白人社会との戦いというストーリーが作られていたわけである、と思う。

このストーリーを勝手にシュタイナーとを結びつけ、予言として世間に(といってもYouTube)広めているのであろうが、事実なのだろうか。

また、日月(ひふみ)神示、なる予言書があって、それも当たっている、などと喧伝している。
ぼくはその日月神示という本を購入して読んでみた。ヒカルランドという出版社が出している、岡本天明・書、中矢伸一・校訂という本だ。

一言でいって、この予言書は当たっていないところが多いと思う。ふつうに読んでみると、太平洋戦争では攻められまくるけれど、最終的には大逆転して日本が大勝利する、という予言であるのだから。
敗戦後、急に論調が変わってしまっているのもなんともよくわからない。しかし、本の内容はかなり興味深く、宗教書としておもしろかった。

しかし、予言が当たっている、などという人たちは、ちゃんと読んでいるのだろうか。

ある人気のある都市伝説系YoutTuberが、「ぼくは聖書を読んだことがない」と発言したのを見て、たまげてしまった。あれほどマンガにはくわしいのに、聖書を読んだことがないとは! ごく一般的な教養としても読んでいないといけないんじゃないだろうか。マンガの内容もよくわからないんじゃないかなあと思う。あらゆるエンタメの基礎知識なのだから。
せめてヨハネの黙示録くらい読んでいないとマンガの元ネタもわからないはずだろうと思う。

ぼくはこういった話題が好きなので、よくYouTubeを見ていたが(最近コマーシャルが多いのであまり見ていない)かなりアヤシイ人物がよく登場している。人々、特に日本人は肩書や経歴が好きなので、「博士」とか「東大出身」などというYoutTuberだと頭からありがたがって信じてしまうけれども、「オカルト博士」などという学位はないし、東京大学にも京都大学にも「オカルト学」という学部はない。
逆にまったくの正論を吐いても、街の飲んだくれのジジイの意見などまったく聞く耳を持たないのである。まあ、これは当然だが。

ただし、専門にその分野を研究している人は別だが、そういう人は、あまりいい加減なことを言わないようだ。

とにかく、すべて、金儲けである。この国では、金儲けだけが正義であり、そのためには法律に触れない限り、なんでも許されるし、賛美される。新興宗教は金が儲かる。

予言者および予言をまき散らしている人たちの多くは、金儲けのために予言を捏造しているにちがいない、と思う